資金調達手法の1つとして不動産を担保にした融資はご存知でしょうか。不動産を所有していることが条件とはなりますが、担保としては強力であり、他の融資にはないメリットが数多くあります。また、資金の用途が限定されていないため、様々な目的で融資を受けることが出来ます。ここでは、不動産を担保とした融資方法について概要や特徴、注意点などを解説していきたいと思います。
Contents
不動産担保融資とは
不動産担保融資は不動産担保ローンとも呼ばれる、土地や建物などの不動産を担保にして、借入者の信用度や担保価値に応じて銀行などの金融機関から融資を受ける資金調達手法です。また、担保となる不動産は、自分名義以外のものや法人名義であっても担保となり、借地権や底地権(※1)といった権利も担保として認められることもあります。
不動産担保融資は、不動産というしっかりとした担保があるため、高額の融資が受けやすく、起業や事業拡大といった様々な理由で利用されています。そして、すでに上限まで銀行融資を受けていても利用でき、金利が低く長期返済が可能という特徴があるため、多くの人々に利用されている資金調達手法となっています。
※1 借地権や底地権は担保価値が低いため、審査が厳しくなる点は留意しておきましょう。
不動産担保融資の流れ
不動産担保融資で融資を受けるまでの一般的な流れは、以下のようになっています。
- STEP.01
- 相談
- まず始めに、電話やメールあるいは直接会って金融機関に相談をします。
この段階で仮審査を受けられることもあるため、あらかじめ土地や建物、物件の種類などについて確認ができる資料を用意しておくといいでしょう。
- STEP.02
- 申込み
- 相談後は、審査に必要な書類を直接または郵送で提出し申込をします。
- STEP.03
- 審査
- 申込み後は、担保となる不動産の調査や評価、会社の信用などの審査が行われます。
審査にかかる期間は1~2週間程のため、事前に計画を立てて融資を受けるといいでしょう。
- STEP.04
- 契約
- 審査後は、融資額や金利、毎月の返済額などについて説明され、契約手続きが行われます。
- STEP.05
- 登記手続き
- 契約締結後は、担保の抵当権や根抵当権、債権譲渡登記の手続きが行われます。
- STEP.06
- 融資
- 登記手続き後は、融資額に応じた資金が入金されます。
不動産担保融資のメリット
不動産担保融資のメリットには、以下のようなものがあります。
受けられる融資が高額なこと
不動産は流動的な資産と違い、比較的確実な担保となるため、金融機関にとってはリスクを減らして融資が行えます。そのため、審査時の評価次第とはなりますが、高い融資を受けられる可能性があり、評価次第では1億円以上の金額で融資を受けることも可能です。
低金利で融資を受けられること
不動産担保融資は融資額が高額になりやすいため、金融機関は貸し倒れリスクを回避するために、審査を厳しくしております。ただし、審査が厳しい分低金利で融資が受けられることがメリットとなります。
長期の借入れが可能なこと
比較的確実な担保があることにより、毎月の返済額を低めに設定することができるため、長期での借入れしやすいのがメリットとなります。ただし、期間が長くなればなるほど、利息の負担額が増えることは留意しておきましょう。
利用目的の自由度が高いこと
住宅ローンを例として挙げると、住宅ローンは住宅の購入やリフォームといった用途以外でに融資を受けることが出来ません。しかし、 不動産担保融資の場合、確実な担保があるため幅広い用途で融資を受けられる、自由度の高い資金調達手法です。
不動産担保融資のデメリット
一方で、不動産担保融資のデメリットには、以下のようなものがあります。
手数料がかかること
不動産担保融資の手数料は、融資額のおよそ1~3%ほどとなります。しかし、融資額が高額となりやすい不動産担保融資では、手数料が高くなりやすいため注意が必要です。
融資までに時間がかかること
不動産担保融資では、不動産の調査や担保の登記手続きなどを行う関係上、融資を受けるまでに時間がかかりがちです。融資を受けるまでには1~2週間ほどかかってくるため、計画的に利用するといいでしょう。
万が一返済不能となると不動産を失うこと
担保としているのは不動産であるため、返済が出来なくなった場合には不動産が売却されます。それは、担保としている不動産には「抵当権」の登記が行われるからです。抵当権とは「借入者が返済不能となったとき、債権者は抵当権が設定されている担保を売却して、貸したお金と利息を回収することができる権利」のことです。そのため、返済不能となった場合には、債権者が不動産を売却して資金を回収するため、担保としていた不動産は失うことになります。
不動産担保融資の利用にあたって
不動産担保融資は他の一般的な無担保融資と比べて、審査に通りやすく低金利で長期間の借入れが可能です。一方で、審査には時間がかかり、万が一返済不能となった場合には不動産を失うリスクを孕んでいます。こういったそれぞれのメリット・デメリットを踏まえて不動産担保融資を上手く利用するには、次のことに注意するといいでしょう。
- 長期に渡る借入れとなるため、信用できる金融機関を利用する
- 金利や手数料を含めて、借り手側の状況を理解してくれる金融機関を利用する
- 融資を受けるまでに時間がかかることに留意し、余裕を持って利用する
- 返済期間が長くなるほど、利息の合計額が増えるため、計画的に利用する
特に、信用できる金融機関を利用することは重要です。金融機関によっては、金利をあえて低くすることで、その分手数料を高く設定するところもあります。また、希望している融資額よりも高い融資額を持ちかけ、借り手側の状況に理解を示さず自社の利益を優先するところもあります。不動産担保融資は金融機関と長期の付き合いになるため、自分が納得できる形で融資を行ってくれる金融機関をしっかり吟味しましょう。
不動産担保融資の審査の注意点
融資を受けるには審査に通過しなければなりません。不動産担保融資の利用を検討しているのであれば、希望の融資額で受けるためにも、事前に審査内容を知っておくといいでしょう。
審査内容
不動産担保融資では、主に次の事柄に基づいて審査が行われています。
- 公示地価(国土交通省が調査した都市の土地の価格)
- 基準地価(都道府県が調査した都市以外も含む土地の価格)
- 路線価(国税庁が算定した税金算出の基になる土地の価格)
- 新価(同等のものを再築・再購入するのに必要な金額)
- 借入者の返済能力(月収や月商と比較した際の融資希望額の確認)
- 会社の信用度(事業歴や他社からの借入れ状況の確認)
最終的な融資額は、担保掛目という評価率で決定した融資上限額からとなります。担保掛目の目安は不動産評価額のおよそ7割となります。例えば、不動産価値が1千万円と評価された場合には、融資上限額は700万円程度となります。そして、こうした審査に通らなかった場合の原因としては、不動産価値が低いもしくは信用度が低いことが考えられます。
必要書類
審査をスムーズに行うためには、あらかじめ書類の準備が必要です。一般的な審査に必要な書類は次のようになっています。
- 本人確認書類(運転免許証、パスポートなどの公的書類)
- 印鑑証明書(実印もあわせて必要)
- 経営状況の確認書類(決算書・法人納税証明書など)
- 資産の証明書類(預貯金・有価証券・残高証明・不動産登記簿謄本・賃貸借契約書など)
- 不動産登記簿謄本
- 固定資産税評価証明書・事業計画書
- ローン償還予定表(借入れ中のローンがある場合)
- 所得証明書・住民課税証明書(個人の場合)
- レントロール(賃貸物件の場合)
不動産担保融資のおすすめ金融機関と特徴
不動産担保融資は様々な金融機関が提供しています。中でも選択肢としておすすめなのが、銀行とノンバンクです。これらは不動産担保融資を取り扱ってきた件数が他の金融機関に比べて多く、信頼に足る金融機関であるためおすすめできます。ただし、銀行とノンバンクではそれぞれ特徴が異なるため、自身に合う方を選択するといいでしょう。
銀行での融資の特徴
銀行での不動産担保融資の特徴は、主に審査が厳しく融資を受けるまでに時間がかかることです。それは、借入者に対する評価や、不動産の評価に対して様々な条件が設定されているためです。ただし、厳しい審査に通ることで、「この借入者であれば貸し倒れリスクが低くなる」と判断されるため、金利が低くなります。銀行ではこういった特徴があり、まとめると次のようになります。
- 審査が厳しい
- 融資を受けるまでに時間がかかる
- 金利が低め
- 諸経費が安い
ノンバンクでの融資の特徴
ノンバンクは預金の受け入れを行わずに、融資に特化した金融機関です。そして融資の元になっているお金は、主に銀行から得ております。そのため、利益を出すために銀行に比べ金利が高くなる特徴があります。他にも「総量規制」というルールのもと融資を行っており、借入金額が少なくなりやすいため金利が高くなりやすいです。一方で、融資に特化しているため、独自の審査基準を設けており、審査スピードが速い特徴があります。ノンバンクではこういった特徴があり、まとめると次のようになります。
- 審査に通りやすい
- 審査スピードが速い
- 金利が高い
- 必要書類が少ない(納税証明書・決算に関する書類・確定申告書など)
不動産担保融資で即日融資は可能?
不動産担保融資は審査が厳しく融資を受けるまでに時間がかかりがちです。しかし、中には即日で融資を受けたい方もいるかと思います。結論からいうと即日で受けることは可能です。ただし、必要な書類をあらかじめ完璧に揃えておく必要があること、不動産担保融資を専門としている金融機関に申込む必要があります。
しかし、どれだけ書類を完璧に揃えておいても、不動産を評価しなければ融資額を決めることも叶わないため、審査には少なくない時間がかかるものです。そのため、即日で融資が可能と謳っている金融機関であっても、ある程度融資を受けるまでに時間がかかると思っておくのがいいかと思います。
まとめ
不動産担保融資は不動産を所有していれば利用できる融資です。また、審査に厳しい分金利が低いといった利点もあります。しかし、長期の借入れとなるため利息の負担が増えやすい、万が一返済不能となった場合には、不動産を失うといったデメリットもあります。そのため、不動産担保融資にはリスクがあること、融資を受けるまでに時間がかかることを理解したうえで、しっかりと計画を立てて利用するといいでしょう。